工業キャスター選定のポイント:色、用途、車輪径を一度に把握
さまざまな使用環境において、キャスターは単なる部品ではありません。一見「車輪」に過ぎないように見えますが、実際には耐荷重、安全性、騒音、作業効率などに深く関わっています。
車輪径の大きさ、接地面の数や面積、タイヤの材質や硬さは、走行時の抵抗や回転の滑らかさ、床面への影響に直接影響します。
さらに重要なのは、色は単なるデザインではなく、材質・硬さ・用途を示す「管理言語」として使用されている点です。
1. 色=材質と用途の直感的な分類(HICKWALL キャスター - 色分けの考え方)
色は識別ツールであり、品質の優劣を示すものではありません。実際の性能は配合、硬度、構造、製造プロセスに基づきます。
1. 灰色・黒色キャスター
一般的な材質: ゴム / 合成ゴム(導電性材質も対応可能)
特徴: 衝撃吸収、静音、グリップ力、床保護。一般用途や衝撃吸収が必要な床面に最適。
適した環境・産業:
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工場・倉庫内物流:継ぎ目やモルタル床などで静かな走行。
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低騒音エリア:病院、学校、図書館など。
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サービス業・公共施設用カート:ホテル、百貨店、博物館、展示館では跡が残らない配合が選択可能。
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精密機器・計測・電子機器(EMS):衝撃吸収、保護;静電制御対応で導電/耐静電材質も選択可能。
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食品・医療用カート、室内作業動線:平坦床に最適;段差やスロープ時には滑り止め・衝撃吸収効果が向上。
注意点: 導電性が必要な場合は、色ではなく抵抗値規格で選定してください。重荷重+長距離/高速走行や油・鉄くずの多い環境では、PUなど他材質の優先検討を推奨。
2. 青・緑・黄色キャスター
一般的な材質: ポリウレタン(PU)(耐静電性対応可)
特徴: 耐摩耗、耐荷重、硬度調整可能、低転がり抵抗、静音。物流・生産ラインで主流。
適した環境・産業:
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倉庫 / 3PL / EC:長距離、省力、エポキシ樹脂・PVC床に優しい。
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製造ライン(加工・板金・射出成形):耐油性・冷却液対応、中荷重~高荷重対応。
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AGV / AMR 自動搬送:低転がり抵抗、省エネ;色で硬度管理可能。
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電子・半導体・EMS:ESD材質で静電気リスク低減、静音性も向上。
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医療・研究室・オフィス・展示館:室内静音、床面保護;跡が残らない配合も選択可能。
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食品・飲料・包装:耐摩耗、省力;必要に応じ食品グレード確認。
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コールドチェーン・冷凍庫:低温対応PUで弾力・グリップ保持。
注意点:
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床面に鉄くずや尖った粒子が多い場合:硬度アップ、タイヤ厚増、保護板追加。
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重荷重で長時間停滞:リフトやスペーサーで平点リスクを回避。
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高温環境:耐高温配合や他材質へ変更。
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耐静電性が必要:抵抗規格で選定、色は識別のみ。
3. 白色キャスター
一般的な材質: ナイロン / PP
特徴: 高硬度、低転がり抵抗、耐薬品・耐湿性。白色外観で衛生管理や汚れ観察に便利。
適した環境・産業:
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食品加工・包装、中央/商用キッチン:洗浄・消毒工程対応、長時間湿潤環境に最適。
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コールドチェーン・冷蔵・冷凍エリア:吸水率低、低温環境には低温対応配合。
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研究室・製薬(ESD非対応)・化学洗浄ライン:多くの薬剤に適合(化学適合性確認推奨)。
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生鮮水産・湿潤作業エリア:ステンレスフレーム推奨。
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平坦硬床の高荷重・低速運用:ナイロンは高耐荷重、効率良好(例:エポキシ床)。
注意点: 硬めで騒音大、床にやさしくない場合:静音PU、中硬度PU、幅広タイヤ、跡が残らない配合への変更。PPは耐荷重・耐熱がナイロンより低いため、中軽荷重向き。ESD必要時は、標準白ナイロン/PPではなく、導電・耐静電仕様を選定。
4. 赤・オレンジ・濃青色キャスター
一般的な材質: 高強度PU、耐高温材質(ESD対応可)
特徴: 高荷重/高サイクル/高温環境向け。低転がり抵抗、変形しにくい。
適した環境・産業:
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重荷重作業台車、トラクター:長距離・高荷重・高速;高硬度PU+高品質ベアリングで省力化。
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鋼材巻取、厚板、重型治具搬送:鋭利なエッジ、衝撃大;高硬度PU、厚タイヤ・保護板使用。
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加工・板金工場周辺物流:鉄くず・バリ対応、耐摩耗・寿命安定。
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塗装・乾燥ライン・オーブン周辺:間欠/連続高温には耐高温配合;超範囲はフェノール樹脂/金属輪へ変更。
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電子・半導体(ESDエリア):重荷重・長距離では耐静電/導電グレードの高強度PUを選択。
注意点:
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連続高温は実温確認、PU耐熱範囲超過時は高温材使用。
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ESD/耐静電は抵抗規格・測定値基準、色は識別のみ。
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鉄くず・尖粒多い場合:硬度アップ、厚タイヤ/保護板、床清掃強化。
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重荷重長時間停滞:リフト/スペーサーで平点リスク軽減。
よくある質問(FAQ)
Q1:色が濃いほど耐久性や耐荷重が高いのですか?
必ずしもそうではありません。色は主に材質や硬度の識別用です。耐久性や耐荷重は、配合、硬度、構造、製造プロセスに依存します。
Q2:耐静電性と導電性の違いは何ですか?
どちらも静電気の蓄積防止を目的としていますが、違いは抵抗値の範囲と管理強度にあります。選定時は顧客規格や試験報告を確認し、色だけで判断しないでください。
Q3:ゴムは必ずPUより静かですか?
多くの床面・同等荷重・速度条件下では、ゴムの吸振・減衰性能が優れ、体感上静かです。しかし、PUは配合を調整できるため、中硬度PUでも静音性と耐摩耗性を両立可能です。
2. 車輪径:省力、段差対応、床面保護、騒音の鍵
1. なぜ大径の方が押しやすいのか?
簡単に言うと、車輪が大きいほど、モルタル床や継ぎ目、凹凸で「引っかかり」にくく、転がり抵抗が小さくなります。スタートも軽く、長時間押しても疲れにくいです。電動牽引では、省エネ・耐久性にも直結します。
2. 段差対応能力は「段差の高さ」で判断
実務経験上、段差高さ ≲ 車輪径の 8~12% であればスムーズに越えられます。
例:段差 12 mm → 推奨車輪径 100~150 mm(4~6インチ)
床面が粗い、継ぎ目が多い場合は、ワンサイズ大きめの車輪を選ぶと安定します。
3. 車輪径と床面保護・騒音の関係
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大径車輪は床面との接触弧が長く、単位圧力が低いため、床を傷めにくい。
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凸凹も減り、騒音も自然と低下します。
ワンポイント: 床への跡や騒音を避けたい場合、車輪径とタイヤ幅を一段階大きくすると体感が大きく改善します。
4. しかし、大きければ良いというわけではない
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車輪径を大きくすると、設備の総高やコストが上がる場合があります。
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旋回半径や設置スペースも考慮が必要です(例:キャスターのオフセット、旋回盤径も変化)。
実務的な考え方: 「押しやすさ・床保護」と「高さ・コスト」のバランスを取り、高さ制限がある場合は無理に大径を選ばない。
5. 推奨車輪径の目安(インチ/mm、選定参考)
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3"~4"(約75~100 mm):短距離・軽荷重。室内移動で静音・床保護を重視するカートに最適。
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4"~5"(約100~125 mm):工場/倉庫向け汎用。静音・省力・コストのバランス良好。
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5"~6"(約125~160 mm):中距離・中荷重。床の継ぎ目でも安定し、引っかかりにくい。
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6"~8"(約160~200 mm):段差対応力向上。床面変化が多く、周転頻度の高い動線に最適。
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≥8"(≥200 mm):高荷重+長距離/牽引向け。衝撃吸収・転がり抵抗制御に優れる。
6. 構造部品と合わせて考えると効果的
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ベアリング:長距離・高荷重では、高級ボールベアリングやローラーベアリングを選ぶと省力かつ耐久性向上。
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保護機構:粉塵や湿気の多い環境では、防塵カバー・ダブルリップシール(防水)などを採用し、ベアリング寿命を延ばす。
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ブラケット剛性:大径車輪はブラケット強度要求が高く、板厚・フォーク間隔・旋回盤径も同時に強化が必要。
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設置スペース:車輪径を大きくする場合、旋回スペース・設置高さを確認し、ドア枠や手すりとの干渉を避ける。
工業用キャスターの色は装飾ではなく、材質や用途の識別を目的としています。まず現場のニーズ(騒音、床材、化学・電気特性、温度、荷重など)を明確にした上で、色で材質を素早く対応させ、最後に車輪径で省力性、段差対応、床面保護、騒音を最適化すれば、ほとんどの環境で安定した選定が可能です。
HICKWALLは生産ライン向けに長年の実績を持つ専門キャスターメーカーです。各種材質のキャスターと包括的なソリューションを提供しており、導電性、耐高温、食品グレード、各種径・硬度のカスタマイズにも対応可能です。選定アドバイスのご相談も歓迎します。設備の効率、寿命、メンテナンスコストのバランスを最適化するお手伝いをいたします。